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『キリスト教で読み解く世界の映画 作品解説110』 関西学院大学キリスト教と文化研究センター編

『キリスト教で読み解く世界の映画 作品解説110』
関西学院大学キリスト教と文化研究センター編
(キリスト新聞社、2023年)

キリスト教と現代的視点をもったレベルの高い作品紹介書
〈評者〉松本 敏之

 これは、関西学院大学「キリスト教と文化研究センター」の研究プロジェクト〈映画とキリスト教〉の成果として生まれたものである。打樋啓史、加納和寛、橋本祐樹三氏の監修のもと、総勢35名の執筆者が、キリスト教に関係する1990年以降に製作された110の映画を紹介し、解説している。執筆陣は神学部の教員を初めとして、関西学院出身の牧師や学校教師などで、関西学院ファミリーのキリスト教専門家たちによる渾身の力作となっている。
 ちなみに筆者は、DVDなどで年に約100本の映画を鑑賞し、教会のHPでも牧師の視点からの映画コラムを公開している。娯楽映画よりも、心の糧になる映画、世界の現実を教えてくれる映画が好きだ。そういう筆者であるが、この本で取りあげられている110本のうち、視聴済みは60本であった。書評依頼を受けてから10本を視聴したが、残りの40本は未視聴のまま原稿を書いている。
 この書物の何よりも大きな特徴は、タイトルにもある通り、キリスト教の視点から世界の映画を読み解いていることである。それは一般の映画作品紹介にはない独自性をもっている。しかもそのレベルの高さは比類ない。共同執筆で、それぞれの専門分野・得意分野から数本ずつ担当されているからこそ、なしえたものだろう。それだけに監修者は、全体を見通しながら、割り振ったり、まとめたりなどで苦労されたことと思う。また聖書のことをよく知らない視聴者のための配慮もあり、作品の背景にある聖書の物語や言葉の説明も丁寧になされている。キーワードや参考聖書箇所が記されているのも親切である。
 取り扱っているジャンルは幅広い。私が特に教えられたのは、歴史にかかわる映画の解説であった(「アレクサンドリア」、「エリザベス ゴールデンエイジ」、「王妃マルゴ」、「キングダム・オブ・ヘブン」、「神聖ローマ、運命の日」など)。三十年戦争、ナントの勅令、神聖同盟などがよくわかるようになった。
 近現代の史実に基づいた、あるいは背景にした映画の解説からも学ぶところが大きい(「イン・マイ・カントリー」、「神々と男たち」、「グローリー 明日への行進」、「白バラの祈り」、「戦場のアリア」、「空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜」、「それでも夜は明ける」、「夜明けの祈り」、「ルワンダの涙」など)。
 現代のさまざまな社会問題を扱った映画も取りあげられる。人種差別、死刑制度、諸宗教の人々との共生、宗教者による性的虐待、移民・難民問題、薬物依存症、性的少数者への差別、繁栄の神学、カルト問題等、多岐にわたる問題について映画を手がかりに詳しい解説がなされている。
 聖書物語を題材にした映画では批判的な解説が多かったが、それらを踏まえておくことは大事であろう。また作品の中に差別的表現が含まれていることに対して、現代的視点から注意喚起がなされていることも適切である。
 すでに観た映画についての解説を読むことも有益であろうし、この本で取りあげられている映画を一つずつ観ていくのもよいと思う。私も早速、残りの40本を観ていくことにしたい。  (まつもととしゆき=鹿児島加治屋町教会牧師)
「本のひろば」2023年5月号掲載

 

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