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「愛する人に伝える言葉」 2021年 フランス

世界の映画 映画の世界 
第85回
「愛する人に伝える言葉」
2021年 フランス 122分
〈監督〉エマニュエル・ベルコ
原題:De son vivant

 母親と二人暮らしの演劇教師バンジャマンは、人生まだまだこれから、という時に、ステージ4のすい臓癌で「余命は半年から1年」と宣告される。最初は自分の運命を嘆くが、残された日々を精一杯生きるために、化学療法を受け入れる決心をする。
 物語は、夏秋冬春と章立てになっており、バンジャマンの病気は次第に悪くなっていく。エデ医師は「思い残すことのないようにしよう」と、人生のデスクの整理を勧める。バンジャマンにはある女性との間に一人の子どもがいたが、会ったこともなく認知もしていなかった。母親が若い二人を別れさせたようである。母親はエデ医師の勧めで彼女と連絡を取り、事実を告げる。息子はミュージシャンになっていた。彼は父の病院にやってくるが、会う決心がつかず近くに滞在している。
 エデ医師はバンジャマンに、「旅立つ前に愛する人に伝える5つの言葉を教えよう」と言って、「〈赦してくれ〉〈僕は赦す〉〈愛してる〉〈ありがとう〉〈さようなら〉だ。順番はどうでもいい」と告げた。
 バンジャマンの死が近づいた頃、音楽医療スタッフが、彼のそばで、「行け!モーセよ。私の民を去らせよ」という黒人霊歌を歌い始めると、突然、隣のベッドの老人が起きて踊り出した。まるでバンジャマンへのはなむけの歌のようであった。
 バンジャマンは母に〈5つの言葉〉を語り、息子には遺書を遺す。息子が父の遺体の枕元でギター片手に歌う「愛の哀しみ」が心に染みる。
 
 エデ医師を演じるのは、現役の癌専門医ガブリエル・サラ。もともと監督が彼のもとを訪ねたことから生まれた映画だ。死の厳粛さと生のすばらしさを同時に描いている。

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