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「妻への家路」2014年 中国

世界の映画 映画の世界
第16回
「妻への家路」
2014年、中国110分
<監督>チャン・イーモウ

1966年から約10年間、中国で吹き荒れた共産党の文化大革命の嵐の時代を背景にした映画である。これまでもチャン・イーモウ監督は、文革を背景にした「初恋のきた道」「サンザシの樹の下で」というラブストーリーを描いてきたが、今回は、もっと大人の愛の形、痛々しくも美しい夫婦の愛を描き上げた。
右派分子のレッテルを貼られ強制労働に就いていたイエンシーはある日逃亡し、妻ワンイーと娘に密かに会いに来る。知らせを受けた党の支部は、「イエンシーに会ってはならない」とワンイーたちに告げる。
イエンシーは家のドアの下から、「明日の朝、駅の階段で待つ」というメモを入れた。舞踊学校でトップダンサーの娘タンタンは、主役を演じたいばかりに、逃亡犯の父親を密告してしまう。
さらに数年が過ぎ、文革が終わった。イエンシーは名誉回復され、家に帰る。しかし妻の様子がおかしい。彼女は、心因性の記憶障がいになっていたのである。特に愕然としたのは、イエンシーを夫として認識できないことであった。彼女はイエンシーが帰ってきた後も、「5日に帰る」という夫の手紙を頼りに、毎月5日になると、化粧をして夫を迎えに駅に行くのである。
イエンシーは、収容所で10年以上ワンイーに書き続け、投函できなかった手紙を小包で送り、それを「代読」する役を演じる。そして妻を案じて、新たな手紙を書く。「今年の冬は寒いから、よく部屋を暖めて」「娘の過ちを赦してやりなさい」。ワンイーの眼は、代読者を通り越して、はるか彼方のイエンシーに注がれる。そして二人は歳を重ねていくのである。「愛は忍耐強い」(一コリント13・4)というパウロの言葉を思い起こした。

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