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「ターニング・タイド 希望の海」 2013年 フランス

世界の映画 映画の世界 
第8回
「ターニング・タイド 希望の海」2013年。
フランス。101分。
<監督>クリストフ・オーファンスタン

 人生には、自分の責任ではないやっかいなことに巻き込まれ、それが発覚するとそれまでの努力が水泡に帰してしまうような経験をすることがある。この映画は、そうした現実を、壮大なヨットレースを舞台にして描く。
 ヤンは、4年に一度開かれる<ヴァンデ・グローブ>に出場することとなった。それは、約百日かけて世界を一周する世界で最も権威あるヨットレース。条件は、単独・無寄港・無援助という過酷なものである。
 ヤンのヨットは、滑り出しは順調であったが、エンジンの故障でカナリア諸島の港沖に停泊を余儀なくされる。「さあこれからだ」と大海を疾走する中、船内に誰かがいることに気づく。16歳のモーリタニア人少年マノが、フランスで心臓の手術をすることを願って、フランス国旗をつけたヨットに潜り込んだのだ。ヤンは大海の真ん中でマノを放り出すわけにもいかず、彼を隠したままレースを続ける。次第に順位を上げ、先頭集団が見えてきた。どうすればよいか。マノと共に過ごすうちにヤンの心も変わってくる。ゴール間近に来た時、彼はある決断をする。ちなみに<ターニング・タイド>とは潮の流れが変わることである。
 私たちの人生を中断する「やっかいなこと」も、実は神の計画のうちにあり、それも恵みであることに、後になってしばしば気づかされるのではないだろうか。
 移民難民に概して優しいヨーロッパ社会も、<イスラム国>の脅威により急速に厳しくなってきているが、この映画を通して、人と人との直接的な出会いこそが大切であることを改めて思わされた。

(「からしだね」2016年1月号)

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