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「バハールの涙」 2018年 フランス他

世界の映画 映画の世界
第56回
「バハールの涙」
2018年 フランス、ベルギー、ジョージア、スイス
111分
〈監督〉エヴァ・ユッソン
原題:Les filles du soleil

イラクのクルド人自治区出身でヤズディ教徒のナディア・ムラドさんが、2018年のノーベル平和賞を受賞したことは、記憶に新しい。
この映画には、ナディアさんが世界に知らしめてきた史実、2014年のIS(イスラミック・ステート)によるシンジャル住民(ヤズディ教徒)虐殺事件や、その時女たちは捕らわれてISの性奴隷にされたことなどが物語の発端として描かれている。
主人公バハールは、女性武装組織「太陽の女たち」の隊長である。自治政府軍、武装勢力と協同してISと戦う。夫を殺され、奴隷状態から逃げ出した彼女たちは死をも恐れない。IS兵士たちも「女に殺されると天国へ行けない」と言って女性部隊を恐れている。
彼女たちの戦いを報じるのは、フランス人女性従軍記者マチルドである。彼女も戦地報道で夫を失い、片目を失っている。
マチルドは、バハールに「なぜ戦闘に加わったのか」と尋ねる。バハールは、「ISに捕虜として捕らえられている息子の救出のためだ」と答えた。いよいよその作戦を実行する日がやってきた。
女戦闘員たちは歌う。「この体と血が土地と子孫をはぐくむ。母乳は赤く染まり、私たちの死が命を産む。私たちの信念、新しい日が始まり、新しい時代がやって来る。女、命、自由の時代」
マチルドは書く。「語りたいのは、打ちのめされながらも再び立ち上がる女たち。倒れても、後を継ぐ者がいる。私マチルドは、彼女たちの歌声に震える。士気高揚の歌、力強い歌、先祖代々に伝わる歌、立てと鼓舞する歌」
私たちも、この声に耳をふさいではならないと思う。

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