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「最愛の子」2014年 中国、香港

世界の映画 映画の世界
第22回
「最愛の子」
2014年、中国・香港 130分
<監督>ピーター・チャン

中国では年間20万人の子どもが行方不明になっているという。この映画は、実際に起きた子ども誘拐事件をもとにして作られた。
ティエンは週末になると、別れた妻ジュアンから3歳の息子ポンポンを預かり、共に過ごす。しかしある日、引き渡しのちょっとした隙に、ポンポンが消えてしまった。防犯カメラには、誰かがポンポンを連れ去る様子が映っていた。ティエンとジュアンは、息子を捜し出すために、ありとあらゆる手を尽くす。
2人は、「行方不明児を捜す会」の交流会に参加する。そこでは自分たちの経験を語りあい、互いに慰め、励ましあう。会の終わりに、みんなで手をつなぎ、リーダーの妻がこう述べる。「私たちが苦しむことで世の苦難が減りますように。他人を犠牲にせず、思いやれば、他人だけではなく自分をも救う。」聖書にも出てきそうな名言である。
失踪から3年後、6歳になったポンポンは、ある農村で発見される。物語はそこからいわば第二幕となる。
ポンポンを育てていたのはリーという不妊症の女性。彼女のために夫がどこからか男の子を連れて来たのだが、誘拐したとは告げないまま、夫はすでに他界していた。リーの子どもを思う愛情は、実の親に勝るとも劣らない。リーはティエンのもとに戻った「息子」を一目見ようと、ティエンの家にこっそりと近づく。咎められたリーは泣きながら、「桃は食べさせないで、アレルギーがあるから」と言う。ティエンも、また涙ぐむ。実はティエン自身も、3年前にテレビでまだ見ぬ誘拐犯に向かって同じ言葉を語っていたのだ。
「一人っ子政策」「農村と都会の格差」など中国特有の社会問題を扱いつつ、見事に世界共通の「子に対する親の愛」の物語となっている。

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