1. HOME
  2. ブログ
  3. 「モロッコ、彼女たちの朝」 2019年 モロッコ・フランス・ベルギー

「モロッコ、彼女たちの朝」 2019年 モロッコ・フランス・ベルギー

世界の映画 映画の世界 
第81回
「モロッコ、彼女たちの朝」
2019年 モロッコ・フランス・ベルギー
101分
〈監督〉マリヤム・トゥザニ
〈原題〉Adam

 映画の舞台は、モロッコ最大の都市カサブランカの旧市街。重荷を負って生きる二人の女性、サミアとアブラの出会いと癒しと再生を描く。

 サミアは未婚の妊婦。イスラム社会モロッコでは、婚外交渉と中絶は違法であるので、未婚の妊婦は犯罪者のような存在であり、それにかかわる人も後ろ指をさされるという。サミアは妊娠がわかり、住み込みの美容師の仕事を失ってしまった。仕事と住まいを求めて一軒ずつ門を叩く。
 一方、事故で夫を失ったアブラは、小さなパン屋を営み、幼い娘ワルダと二人で暮らしている。サミアとかかわりたくないアブラは彼女を退けようとするが、見捨てることもできない。仕方なくサミアを受け入れる中、ワルダの働きもあり、次第に心を開くようになる。そして夫の死から埋葬までの様子を語った。女の自分は脇に追いやられ、墓へ送ることも許されなかったと。
 サミアは子どもを産んだら、すぐに養子に出し、過去を忘れて故郷で結婚をしたいと考えている。生まれてくる子もそのほうが幸せになれると。
 だがいざ産まれてくると彼女の心は揺れる。子どもには「アダム」と名付けた。それは新しい始まりを象徴する名前である(原題は「アダム」)。

 イスラム社会において女性が自立して生きることの厳しさを思ったが、同時に女性たちのたくましさも感じた。トゥザニ監督も女性である。またこの映画からシスターフッド(姉妹愛)という言葉を思い起こした。違った形ではあるが、厳しい妊娠を通して心を通わせたイエスの母マリアとエリサベトのシスターフッドに通じるものがある(ルカ1:26~45)。

ポスター画像

関連記事