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「ドリーム」 2016年 アメリカ

世界の映画 映画の世界
第44回
「ドリーム」2016年
アメリカ、127分
<監督>セオドア・メルフィ

1969年のアポロ11号の月面着陸は世界中の注目を浴びたが、そこに至るまでにこういう人たちがいたということに驚かされた。原題はまさに“Hidden Figures”(知られざる人物たち)。
これは、天才的な数学者キャサリン、エンジニアのメアリー、後に管理職となるドロシーというNASAにおいて画期的な働きをし、新たな歴史を築いた3人の黒人女性たちの物語である。

キャサリンは、人種差別の根強い南部ヴァージニア州のNASAラングレー研究所で、計算係として配属され、実力を発揮していくが、差別に苦しむ。その極みは彼女の使えるトイレがないこと。彼女の訴えを聞いて、ケヴィン・コスナー扮する上司が「非白人用」「白人用」という標識をハンマーでぶっ壊すシーンはすがすがしい。
メアリーはNASAの技術者となるために学校に行く必要があったが、黒人女性にはその資格がなかった。彼女は裁判で判事に訴える。「この州で白人の高校に行った黒人女性はいません。前例がない。肌の色は変えられません。だから前例となるしかないのです。判事のお力が必要です。今日あなたが処理する案件で百年後も意義があるのは、どれくらいあるでしょう、あなたが前例になれるのは」。説得力のある訴えに判事も心動かされ、彼女の願いは聞き届けられた。
ドロシーは、新しいコンピュータ言語を学ぶために、図書館へ本を借りに行くが、それは白人用図書にしかなかった。彼女はこっそりそれを持ち帰る。「本を盗んだの?」と聞く息子に、「今の社会が正しいわけではない。正しいことをする人が正しい。図書館の本は私の税金で買ったもの」と答える。

歴史はこのようにして変えられていくのだということを実感させられる。

(「からしだね」2019年1月号掲載)

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