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「タクシー運転手 約束は海を越えて」 2017年 韓国

世界の映画 映画の世界
第61回
「タクシー運転手 約束は海を越えて」
2017年 韓国 137分
〈監督〉チャン・フン
原題:A Taxi Driver

1979年朴正煕大統領の暗殺後、しばらくして全斗煥率いる軍部によるクーデターが起こる(12月12日)。それに反対する全国的な民主化運動が高まる中、光州と全羅道の市民が蜂起した。全斗煥政権は軍隊を動員して、これを武力弾圧し、300人以上の犠牲者・行方不明者が出た。1980年5月18~27日の光州事件である。
戒厳令下厳しい規制をくぐりぬけ、光州事件の真相をいち早く世界に発信したのが、ドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーター氏である(映画ではピーター)。そしてヒンツペーターにソウルから同行し、無事にソウルの空港まで送り届けたタクシー運転手がキム・サボク氏である(映画ではマンソプ)。この二人がいなければ、世界が事件の生の姿を知ることはできなかった。
あらすじを述べる必要はないだろう。光州を脱出しようとするマンソプのタクシーを警察車両が追いかける中、突然光州のタクシー軍団が現れ、それを妨害するカーチェイス・シーンは圧巻である。「運転なら自分たちのほうが上だ」と言わんばかりだ。
実在のフランツペーター氏は、その後キム・サボク氏を探すのに奔走するがどうしても見つからなかった。映画が封切られる時には当のフランツペーター氏は他界していた。映画の最後に登場し、「どうしても会いたい。あなたの運転で今のソウルを見たい」と訴える姿に胸が熱くなる。
映画には後日談がある。キム氏の息子もこの映画を観、父がモデルだとわかったのだ。上映後しばらく立ち上がれなかったという。キム氏は1984年に他界していたが、今は光州の墓地で隣り合わせに葬られているという。

ポスター画像

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