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「ベツレヘム 哀しみの凶弾」2013年 イスラエル、ドイツ、ベルギー

世界の映画 映画の世界
第19回
「ベツレヘム 哀しみの凶弾」
2013年、イスラエル、ドイツ、ベルギー 99分
<監督>ユヴァル・アドラー

ベツレヘム。それは世界中のクリスチャンにとって、特別な町の名である。訪れたことのない多くの人にとっても、子どもの頃のページェントなどの記憶からなつかしい響きがあるかもしれない。
しかし、現代のベツレヘムは、<イスラエル>と<パレスチナ>が衝突する、世界で最も厳しい現実の中にある。
この映画は、その最前線、イスラエル諜報機関で働くラジと、その<情報屋>として働かざるをえなくなったパレスチナ人の少年サンフールの人間的な出会いと苦悩を描く。
サンフールは、最も過激な抵抗組織アル・アクサのリーダー、イブラヒムの弟であるが、15歳の時、脅迫を受けて<情報屋>にならされた。しかしラジはサンフールを息子のように世話をし、信頼関係を築いてきた。そのサンフールも17歳になった。
ある日のこと、ラジはサンフールを犠牲にして、イブラヒムをおびき出すことを上司から命じられる。しかしラジは、サンフールをそっと逃がしてやる。
結局兄を失うこととなってしまったサンフールは、ラジを慕いつつも恨むという複雑な感情のもと、兄が率いていた組織に近づいていく。そこで、彼が<情報屋>であることが発覚し、彼はラジを殺して忠誠を誓うよう命じられるのである。彼はラジと会い、自分を「連れて行ってくれ」と願うのであるが……。
この映画は、イスラエル側の制作であるが、パレスチナの人々を単純に悪者扱いせず、両方の苦悩をかなり公平に描いていることはすばらしいと思った。エンディングロールがヘブライ語とアラビア語で併記されるのも好ましい。
クリスマスの季節、改めてベツレヘムの平和を願う。

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