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「わたしはダニエル・ブレイク」 2016年 イギリス

世界の映画 映画の世界
第34回
「わたしは、ダニエル・ブレイク」
2016年イギリス他100分
<監督>ケン・ローチ

「どのようなときにも、友を愛すれば、苦難のときの兄弟が生まれる」(箴言17・17)。
「弱い人の叫びに耳を閉ざす者は、自分が呼び求める時が来ても答えは得られない」(箴言21・13)。

ダニエル・ブレイクは現在59歳。イギリス北東部のニューカッスルという町で大工として働いていたが、心臓の病気になり、医師から仕事を止められる。国の援助を受けようとするが、複雑な審査につまずき、しかも結果は「就労可能なため受給不可」という厳しいものだった。仕方なく求職者手当を受けようとするが、そのためには働くことができないのに、あちこちに履歴書を出して働く意思を示さなければならない。
ある日、彼と同様に、役所の冷たい対応に困り果てているシングルマザーのケイティと二人の小さな子どもたちをかばったことから彼らの家に出入りするようになる。家の修理をしてやり、子どもたちとも親しくなり、心の交流が生まれていく。自ら痛みを負っている人こそ、人の痛みもわかるものである。
しかし彼らの前に立ちはだかる壁は大きい。思い余ったダニエルは、ついに役所の外壁にスプレー缶で「落書き」を始めた。「わたしは、ダニエル・ブレイク。人間であって、犬ではない……」

監督ケン・ローチは、こう述べる。「生きるためにもがき苦しむ人々の普遍的な話を作りたいと思いました。死に物狂いで助けを求めている人々に国家がどれほどの関心を持って援助しているか、いかに官僚的な手続きを利用しているか。そこには、明らかな残忍性が見て取れます。これに対する怒りが、本作を作るモチベーションとなりました。」
2016年のカンヌ映画祭パルム・ドールを受賞した力作である。

ポスター画像

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