「シスター 夏のわかれ道」 2021年 中国
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第88回
「シスター 夏のわかれ道」
2021年 中国 127分
〈監督〉イン・ルオシン
アン・ランは、交通事故の現場に呼び出され、そこで疎遠にされていた両親が事故死したことを知らされ、6歳の弟アン・ズーハンと初めて出会わされる。
中国では1979年から35年間、原則一家庭に子ども一人しか認めない「一人っ子政策」が実施されたが、例外として、子どもに身体的障がいがある場合、第二子をもうけることが認められた。
男の子が欲しいランの両親は、ランの脚に障がいがあると申請して、第二子をもうけることが許可された。ランは親と別居して育ったが、甘やかされたズーハンをこの日から押し付けられてしまう。
ランは看護師として働きつつ、医師になるため北京の医大の大学院への進学を目指して猛勉強している最中であった。大学受験の時も実は北京の医大への願書を書いていたのに、「女は地元で看護師になるのがいい」と、勝手に書き換えられていたのだ。
ランは、自分の夢を実現するために、必死でズーハンの養子先を探すのだが、次々とさまざまな問題に遭遇する。そうした中、姉と弟の間に愛情が芽生えてくる。
ランはズーハンに、「こんなこと言ってもわからないよね」と言いつつ、自分の置かれた状況と気持ちを吐露する。ズーハンは「もう少し待てない? 僕にはお姉ちゃんしかいない」とつぶやくのだった。
ズーハンは、いったん破談になった養子縁組先に自ら連絡を取り、勝手に引越していく。姉を思いやってのことであった。ランは、ズーハンを追いかけていく。
この映画の背景は特殊であるが、私たちもどちらに進むべきか「わかれ道」に立たされることがあるのではないか。その時に、何を判断基準に決断するのかが問われることになる。