「サンドラの小さな家」 2020年　アイルランド・イギリス

世界の映画 映画の世界　
第77回
「サンドラの小さな家」
２０２０年　アイルランド・イギリス97分
〈監督〉フィリダ・ロイド
原題：Herself

「私はあなたに命じる。この地に住むあなたの同胞、苦しむ者、貧しい者にあなたの手を大きく広げなさい」（申命記15・11）。
　舞台はアイルランドの首都ダブリン。二人の小さな娘をもつサンドラはこれまで夫の暴力に苦しんできたが、その日は特別ひどい暴力を受けた。娘に、近所の人のところへ助けを求めに行かせ、何とか逃げることができた。
　保護局に相談し、ホテルに仮住まいをしながら、公営住宅の抽選があたるのを待つ。仕事はパブの雑用係とお年寄りの身の回りの世話。心も体も疲れ切っている。公営住宅に入れる目処が立たない中、娘の話をきっかけに、インターネットで「建築家の指導を受けながら、自分で家を建てる」方法があることを知る。
全くの素人で、土地もお金も技術もないが、不思議な形で道が拓けていく。土地は世話をするお年寄りが庭を提供してくれた。サンドラの熱心さに突き動かされるように、ボランティアが集まってきた。
毎週末には娘たちを夫のところへ連れて行かなければならないが、「家作りのことは絶対に内緒」と言ってある。しかし「工事現場」で娘に怪我をさせてしまい、秘密がばれ、ついに親権まで奪われそうになる。
　さまざまな困難を乗り越え、小さな家はついに完成した。感謝を述べるサンドラにボランティアの現場監督は言った。「昔のアイルランドの精神〈メハル〉だ。それは皆が集まって助け合うこと。その結果、自分も助けられる。」
その話の途中、再びサンドラを絶望の淵に落とす事件が起きる。しかし神様は見捨ててはいなかった。