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「PERFECT DAYS」2023年 日本

世界の映画 映画の世界 
第92回
「PERFECT DAYS」
2023年 日本 124分
〈監督〉ヴィム・ヴェンダース

 舞台は、現代の東京であるが、主人公の平山は、昭和からタイムスリップしてきたような人物である。
 仕事は渋谷区の公共トイレの清掃。下町の質素なアパートに一人で住んでいる。夜明けと共に起き、玄関のドアを開け、空を見上げて、感謝するようににっこりと笑う。支度をして、缶コーヒーを買って、車に乗り込む。カーステレオの音源はカセットテープ。昔の洋楽を聴きながら、首都高を走り抜ける。仕事は一切手抜きをしない。便器もきれいに磨き上げる。平山がトイレ掃除をしている間に利用者が来ると、平山は退出し、外で待つ。利用者には平山の存在は目に入らない。
 「この世界はホントはたくさんの世界がある。つながっているように見えても、つながっていない世界がある。」
平山にはそれがわかるのであろう。しかし逆のこともあるだろう。平山は、トイレの壁の隙間に挟まれた〇×ゲームの紙を見つけ、それに応答した。翌日、見知らぬ相手も応答してきた。
仕事の後は、風呂屋の一番風呂に入り、駅地下で酎ハイを飲む。夜の楽しみは眠くなるまで寝床で文庫本を読むこと。単調に見える生活でも、その一つひとつに小さな幸せを見いだしているようだ。
ある日、姪のニコが家出をして、平山を訪ねて来た。母親(平山の妹)が運転手付きの外車で迎えに来る。豊かであってもあまり幸せではなさそうだ。平山は、ニコも、妹も、そっと抱きしめてやった。
豊かさとは何か、幸せとは何かを考えさせられる映画だ。
 「食べて飲み、労苦の内に幸せを見いだす。これ以外に人に幸せはない。それもまた、神の手から与えられるものと分かった」(コヘレト2:24)。

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