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「エール!」2014年 フランス

世界の映画 映画の世界
第21回
「エール!」
2014年、フランス 105分
<監督>エリック・ラルティゴ

ペリエ一家はフランスの田舎で酪農を営む4人家族。ポーラ以外の3人、父と母と弟は耳が聴こえない。唯一耳の聴こえるポーラは、学生ながら、業者との対応、お客様対応、通訳など多くの働きを担う。苦労も多いが、明るく楽しい、愛に満ちた家族である。
ある日、ポーラは学校の音楽教師に歌の才能を見いだされ、パリの音楽学校の受験を勧められる。彼女自身も歌の道に進むことを夢見ながら、家族のことが心配でレッスンを受けていることも秘密にしている。それを打ち明けた時、母は酔ってこう語った。
「あなたが生まれて耳が聞こえると知った時、どれほど泣いたことか。育てる自信がなくて。でも『心配するな』とパパが慰めてくれた。『この子はろうあ者の心を持っている。耳が悪いと思って育てよう』なのに歌を歌うの?」
学内のコンサートで、ポーラは好きな男の子とデュエットするが、二人が歌い始めた時、映画は無音状態となり、会場内の様子を映像のみが伝える。観客は二人にくぎ付けとなり、涙を流す人もいる。映画を観る人は、そこでポーラの家族と一体となる。
ストーリーは何となく読めてしまう展開だが、それにもかかわらず、最後にポーラが歌うサルドゥの「青春の翼」には目頭が熱くなる。それほど彼女の歌はすばらしい。あたかも映画全体がこの歌のためにあるかのようだ。確かにポーラは、ろうあ者の心を持った歌手に育った。彼女は家族にも通じる言葉で歌う。
「ねえパパとママ、僕は行くよ。旅立つんだ、今夜。逃げるんじゃない。飛び立つんだ。……振り返らない。遠ざかる。駅から駅へ、やがて海へ。見たかもしれない、パパとママは僕の涙を。でも戻らない。進もう、人生を信じて」

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