「おみおくりの作法」 2013年 イギリス
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第12回
「おみおくりの作法」
2013年、イギリス、91分。
<監督>ウベルト・パゾリーニ
英国版「おくりびと」として話題になった映画である。日本の「おくりびと」とはテーマも作法も全く違うが、共通するのは、亡くなった人に対する敬意であろう。
ジョン・メイは、ロンドン市ケニントン区の民生係。身寄りがなく孤独死した人の「葬り」を担当する。まず写真を探し宗教を調べて、葬儀の手配をする。その人の遺品・手紙等をチェックしながら、人生をたどり、葬儀の弔辞を書き、その人にふさわしいBGMを選ぶ。知人・親族との連絡を試み、連絡がつけば、葬儀の案内をする。「費用はいらない」と念を押すが、多くの場合、葬儀に参列するのは彼一人だけである。
実はジョン自身も、親族や友人が誰もいないらしく、淡々とした生活を送っている。夜になると自分が担当した人たちの写真を貼ったアルバムを眺める。その人たちはジョンの心に生き続けているのだ。
しかし彼の作法は時間と費用のかけ過ぎということで、解雇通知を受けることになる。彼は最後となるビリー・ストークの葬りに、全身全霊を傾けて向き合い、知人・家族を尋ね求める旅に出かける。そこでビリーの娘と出会い、彼の人生は輝き始めるのだが、思わぬ結末が待っていた。
彼に解雇を言い渡した上司は、「葬儀は死者のためではなく、遺された者のためにある。弔う者のいない葬儀は不要だ」と言い切る。確かに葬儀は第一に遺された者のためにあるのは事実であるが、この映画を通して、亡くなった方の気持ちを形にするという意義もあると、改めて考えさせられた。特に、誰にも看取られない人にとってはそうであろう。感動的なラストシーンがそれを示している。