2023年1月1日説教「ナオミとルツ」松本敏之牧師
ルツ記1章15~18節 マタイによる福音書1章5~6a節
(1)ルツ物語の紙芝居
あけましておめでとうございます。
今年も皆様の上に、神様の導きと祝福と守りがありますようにお祈りいたします。そして今年こそ平和の年となりますように、共に祈り、行動していきたいと思います。
さて鹿児島加治屋町教会では、聖書日課を定めて、聖書全巻通読の勧めをしています。今は、旧約聖書の士師記という書物を読んでいますが、金曜日でそれを読み終えて、土曜日1月7日からルツ記を読み始めます。と言っても、短い4章だけの書物ですから、来週の水曜日1月11日には終わります。
今日は、全家族礼拝、子どもと大人の合同礼拝となりましたので、紙芝居を用いて、ルツ記に描かれているルツの物語のお話をしようと思います。最後に短くまとめの言葉を語ります。
(2)3人の女性のそれぞれの決断
ルツのお話を紙芝居でしましたが、まとめとして幾つか大事な点を申し上げたいと思います。
ひとつは、この物語に登場する3人の女性についてです。
ナオミさんという女性はかわいそうな境遇でした。ベツレヘムの出身でしたが、ベツレヘムが飢饉となった時に、夫と共にモアブの地に逃れました。二人の息子がいました。ところが夫も、二人の息子にも先立たれてしまいます。のこされたのはナオミと2人の息子の妻、オルパとルツという3人の女性です。この当時、女性が自立して生きるのはとても大変な時代でした。
ナオミさんは年を取ってきて、故郷の飢饉も収まったようなので、ついにナオミは故郷のベツレヘムに帰る決心をします。その時に、死んだ息子たちの妻であるオルパとルツには、「あなたたちは若いのだから、この地(モアブ)に残って再婚しなさい」と説得します。最初は二人とも「そんなことはできません」というのですが、オルパさんは最終的に泣く泣くそれを受け止めて去っていきました。しかしルツさんは、「どこまでもお母さんといっしょについていきます」と言って、見知らぬ土地ベツレヘムまでついて行きました。
私はここに出て来る3人の女性たちが、それぞれ自分の決断で主体的に物事を決めて行ったというのはすごいと思いました。それはルツさんだけではなく、オルパさんも含めて、そうです。オルパさんは一生懸命考えて残る決心をし、ルツさんは一生懸命考えて、ナオミさんについて行く決心をしました。そしてお義母さんのナオミさん自身も一生懸命考えて故郷に帰る決心をし、オルパさんとルツさんには、残るように説得する決心をしたのです。
(3)ルツの信仰
第二はルツさんの信仰です。ルツさんはナオミさんにこういうことを言っています。
「あなたの民は私の民 あなたの神は私の神です。」ルツ記1:16
お義母さんであるナオミさんに向かってそう言いました。この当時、家の信仰が自分の信仰であって、自分の信仰はなかなか自分では決めない、決められない時代です。そうした時代に、ルツさんは、自分の信仰を自分で決めている。お義母さんの信仰を自分の信仰として受け入れるという決心をした。
今の時代でこそ、自分の信仰は自分で決める。親の信仰はそのまま自分の信仰ではない、ということが当たり前になってきています(今でもなかなか難しい)。そうした時代の先駆けかな、と思いました。
(4)救い主にいたる約束の系図
最後に三つ目です。ルツ記の最後に、ダビデの系図が出ています。
「ペレツの系図は次のとおりである。ペレツはヘツロンをもうけた。ヘツロンはラムをもうけ、ラムはアミナダブをもうけた。アミナダブはナフションをもうけ、ナフションはサルマをもうけた。サルマはボアズをもうけ、ボアズはオベドをもうけた。オベドはエッサイをもうけ、エッサイはダビデをもうけた。」ルツ記4:18~22
さかのぼって言いますは、エッサイはダビデのお父さん、オベドはダビデのおじいさん、ボアズはダビデのひいおじいさん、ということになります。ということは、ルツはダビデ王のひいおばあさんということになります。ところが、この系図には、ルツの名前は出てきません。せっかくルツの話をしてきたのに、ルツの名前は消えてしまっています。
この当時、父系の系図(男のほうの系図)が大事であったのです。当たり前のようですが、ちょっと残念でした。
ところが、新約聖書の一番はじめのところに、イエス様の系図が出てくるのです。その中には、ルツの名前がわざわざ書いてあります。
「サルモンはラハブによってボアズをもうけ、ボアズはルツによってオベドをもうけ、オベドはエッサイをもうけ、エッサイはダビデ王をもうけた。」マタイ1:5~6
そしてこのダビデ王のずっと先、子孫にマリアの夫になるヨセフが出てきます。ですから、ルツはダビデ王の先祖になっただけではなく、イエス様の先祖にもなったと言えるでしょう。もっとも先祖と言っても、イエス様はヨセフと血のつながった親子ではありませんでしたので、血縁という意味での先祖であったわけではありません。約束の系図と言ってもよいかもしれません。イエス様の系図は不思議なんです。先祖からずっと最後のヨセフまで、長い長い系図なのですが、肝心のヨセフとイエス様の間に血のつながりがなかったわけですから、「果たしてこんな長い系図は意味があるのかな」と思う人もあるかもしれません。この系図は血統図ということではなく、約束の系図、約束の系譜という意味があるのです。
そういった意味で、このルツも救い主誕生の約束の系図に組み込まれ、その約束の先駆けになったということができるでしょう。