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「NO」 2012年 チリ

世界の映画 映画の世界
第6回
「NO」 2012年、
チリ、アメリカ。118分。
<監督>パブロ・ラライン

1970年南米チリにおいて、世界初の民主的選挙による社会主義政権が誕生するが、その政権は1973年9月11日に軍事クーデターにより覆されてしまう(もう一つの9・11)。ピノチェト将軍は、その後、大統領となり、「左翼狩り」と弾圧、強権政治を行っていく。その背後には、反共政策を支援する合衆国がいたことを忘れてはならない。
冷戦の終結が見え始めた一九八八年、独裁政権への国際批判も高まっていく。ピノチェトは政権の正当化を図るべく、政権の存続を認めるか否かの国民投票を実施することを決め、賛否両派が27日間、毎日15分間テレビキャンペーンを展開することとなった。映画は、その前後をドキュメンタリー・タッチで描く。
広告マン、レネは「NO」陣営に雇われる。レネが雇われる前、彼らは、これが「出来レース」だと認めながら、独裁政権の残虐さを訴える機会ととらえ、番組を制作していた。それは暗く重いトーンに満ちていた。しかしレネは、「やるからには勝つ。勝つためには、明るく希望を感じさせるものを」と訴える。日増しに「NO」支持者は増えていくように見える中、投票日を迎えることとなる。
戦略会議での会話。「(勝つのは)どの程度に不可能なのか」と問われると、「奇跡レベル。必要なのは奇跡。つまり神」と誰かが答える。そして日本語字幕には「信心。それが国を変える。チリに必要なのは神業よ」と出るが、ここはやはり、「信仰(La fe)。それが国を変える。チリに必要なのは神の業よ」と訳したい。「人間には不可能でも、神ならばそれをできる」と信じているのだ。

(「からしだね」2015年11月号)

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