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「旅するローマ教皇」 2022年 イタリア

世界の映画 映画の世界 
第91回
「旅するローマ教皇」
2022年 イタリア 83分
〈監督〉ジャンフランコ・ロージ
〈原題〉 In viaggio

 南米出身初のローマ教皇フランシスは、就任の2013年から2022年までの9年間に、37回53か国を旅し、多くの人たちと出会い、語り合った。この映画はその貴重な記録である。
 教皇フランシスは、1936年ブエノスアイレス生まれ。本名はホルヘ・マリオ・ベルゴリオ。1960年代から80年代まで、南米では軍政の嵐が吹き荒れる中、「貧しい人の優先」を掲げて軍政と対峙する「解放の神学」が生まれる。ベルゴリオ神父は、表立った解放の神学者ではなかったが、その重要性を認識していた。そのセンスは彼が教皇になってから如何なく発揮されていく。
 難民船が漂流してくるイタリアの海岸では、「私たちの社会が失ったのは泣くという体験です。無関心のグローバル化が泣くという力を奪ったのです」と訴え、リオデジャネイロのスラム街では、「教会は皆さんに寄り添います。私たちの社会を支配しがちなエゴイズムと個人主義の文化が住みやすい世界を導くのではない。連帯と絆の文化こそが導くのです」と語った。アメリカでは、「私たちは自問すべきです。なぜ人を殺す兵器が売られているかを。悲しいことですが、それはお金のためです。そのお金は罪のない者の血に染まっています。この恥知らずで罪深い沈黙を前に、私たちが果たすべき務めは、この問題に立ち向かい、武器の売買を止めることです」と大胆に語った。
 そこに貫かれているのは、弱い人々、抑圧されている人々には希望、あきらめない勇気を語り、力をもつ人々には、悔い改めと連帯を語ることである。それらの言葉には、確かに世界をよい方向へと変革する道が示されている。

ポスター画像

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