「希望のかなた」 2017年 フィンランド
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第45回
「希望のかなた」2017年
フィンランド、98分
<監督>アキ・カウリスマキ
ヘルシンキに住むヴィクストロムは、妻と別れて家を出た後、カジノで得たお金をもとにささやかなレストランを始めた。ある日、ゴミ置き場に汚れた服を着た青年がしゃがみ込んでいるのを見つける。
彼の名はカーリド。シリアからの難民であった。カーリドは故郷アレッポの町で修理工として働いていたが、ある日、家に帰るとミサイル攻撃で家は破壊され、パンを買いに出かけていた妹のミリアム以外の家族は全員死んでいた。
妹と二人で国を出て、トルコ、ギリシャ、マケドニア、セルビアを経てハンガリー国境まで来たが、そこで妹と別れ別れになってしまった。2か月間探し回ったが手掛かりもなかった。彼はたまたま昼寝をしていた石炭船でフィンランドへたどり着く。難民申請をしたが認められず、強制送還されそうになるところを逃げ出し、そのゴミ置き場で休んでいたのだった。
ヴィクストロムをはじめ、大勢の人たちに助けられながら、カーリドはヘルシンキで新しい生活を始める。「妹がリトアニアで見つかった」という知らせが入った。トラックの運転手の協力と機転により、彼女はヘルシンキにやって来る。「謝礼を払う」というヴィクストロムに対し、運転手は「ステキな荷物を運べた。金なんか要らない」と断る。彼も感動しているのだ。
小さな善意のひとつひとつが、親切を受けた当人だけではなく、それにかかわったみんなを幸せな気持ちにしてくれる。
「誰かを受け入れるとき、そこには希望が生まれる」この映画のキャッチコピーであるが、真実な言葉だ。
「隣人を自分のように愛しなさい」(マタイ22・39)。そのことによって、私たち自身が豊かにされるのである。