「世界の涯ての鼓動」 2017年 ドイツ・フランス・スペイン・アメリカ
世界の映画 映画の世界
第66回
「世界の涯ての鼓動」
2017年 ドイツ・フランス・スペイン・アメリカ 112分
〈監督〉ヴィム・ヴェンダース
原題:Submergence
「さすがヴィム・ヴェンダース」とうならされ、ため息が出る。深くそして美しい。
「死を目前にした時、人は何を思うのか。」二人の若い男女の極限状況を通して、それを考えさせられる。
男の名はジェームズ。MI-6(イギリス秘密情報部)の諜報部員であるが、誰にも身分を明かすことはできない。ヨーロッパ全土で起こっている爆弾テロの組織が潜む南ソマリアへ向かおうとしている。
女の名はダニー。生命の起源の謎に迫る海洋生物学数学者である。海洋調査船で移動しながら、グリーンランドの深海を探査する潜水調査艇に乗り込む準備中である。深海で事故が起きたら、誰も助けに向かうことはできない。
二人は、フランスのノルマンディー海岸のホテルで出会い、一瞬のうちに恋に落ちる。二人が共に過ごしたのはわずか5日間であるが、お互いに「運命の人」と確信する。
ダニーは、ジェームズに不測の事態への不安も何もかも打ち明ける。しかしジェームズは本当のことを話すことはできない。ソマリアへは井戸を掘る水の専門家として入国することになっているが、彼女にもそのように言う。
ジェームズの出発の日、お互いに携帯で連絡を取り合うことを約束して別れた。しかし彼はソマリア入国後、水の専門家として組織に近づいたにもかかわらず捕らえられ、真っ暗な部屋に閉じ込められてしまった。彼は深海のようなその場所で、しかもいつ殺されてもおかしくない状況で、ダニーのことを思い、必死に精神を保とうとする。
ダニーは、ジェームズからの連絡が途絶え、「忘れられたのか」という不安を抱えつつ、深海へと向かう。そして深海で潜水艇に亀裂が入る。