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「ローマ法王になるまで」 2015年 イタリア

世界の映画 映画の世界
第38回
「ローマ法王になる日まで」
2015年 イタリア113分
<監督> ダニエレ・ルケッティ

ベネディクト16世の生前退位を受けて、2013年に史上初のアメリカ大陸出身、しかも南米出身のローマ教皇が誕生した。この映画は、その教皇フランシスコの半生をドキュメンタリーふうに描く。
学者肌の前教皇とは全く違い、彼は気さくな庶民派の教皇として知られる。貧しさや困難にあえぐ人々に寄り添った活動を展開し、環境問題や人種差別にも敏感である。米国のトランプ大統領が「移民流入を防ぐために壁を作る」と発言した時も、「壁よりも橋を作るべき」と批判した。

後に教皇フランシスコとなるホルヘ・マリオ・ベルゴリオは、1936年ブエノスアイレス生まれ。大学で化学を学んでいたが、献身しイエズス会士となった。アルゼンチンは、他の南米諸国同様、1976年から83年の間、軍政であったが、この時代多くの民主活動家が逮捕、監禁、拷問され、3万人が死亡または行方不明となった。ベルゴリオはその頃イエズス会アルゼンチン管区長であった。活動家青年たちを神学校にかくまったり、スラム街で住民の側に立つ神父に警告に行くが聞き入れられず、仕方なく追放せざるを得なかったり、とその苦悩がリアルに描かれる。
彼は、立場上、過激な活動家をたしなめつつ、一方で拉致者、行方不明者を救出することに奔走した。枢機卿と面会し、海軍大将とかけあい、大統領に「人道的立場からの慈悲」を訴える。

多くの日本人には知られていないが、まさにラテンアメリカの現代史である。現在の教皇のスタンスは、この時代に育まれたのに違いない。
ちなみに一般的には〈法王〉という呼称が用いられることが多いが、日本のカトリック教会では、正式には〈教皇〉という呼称を用いていることを申し添えておきたい。

ポスター画像

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