「ロープ 戦場の生命線」 2015年 スペイン
世界の映画 映画の世界
第48回
「ロープ 戦場の生命線」
2015年
スペイン 106分
<監督>フェルナンド・レオン・デ・アラノア
1995年、バルカン諸国のどこか、という設定。ユーゴスラビア連邦解体後、次々と起きた紛争のうち、クロアチア紛争とボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が停戦状態になった年である。
ある村の井戸に、人の死体が投げ込まれた。一体誰の仕業なのか。そこへ危険を顧みずに救助活動に励む民間の「国境なき水と衛生管理団」が出動する。任務は死体を取り除いて、きれいな水が飲めるようにすること。長いロープで死体を引き上げようとするが切れてしまい、そこから地雷が埋まる危険地帯でロープ探しの奔走が始まる。
チームはさまざまな国籍の4人に、責任者マンブルゥのかつての恋人が活動審査官として加わって不思議な五人組となる。彼らは国連軍に訴えるも、司令官は「地雷の撤去が先だ」と取り合おうとしない。業を煮やした新人ソフィーは「死体に地雷が付けられている」と嘘をつくが、これが後にあだとなる。
サッカーボールを奪われた少年を助け、彼の案内で、ロープがあるという町を訪ねる。そこは、紛争で完全に廃墟となった町であった。そこでロープを見つけるのだが、そのロープは彼らの想定外のものであった。果たして彼らのプロジェクトはうまく行くのだろうか。話は思わぬ結末を迎える。
随所にユーモアがちりばめられているが、それは紛争地を生きる人々がジョークを飛ばしながら、厳しい現実を何とか耐え抜いていった姿に通じるものと言えよう。
「人の心にある計りごとは深い井戸の水のようだ、しかし、さとき人はこれをくみ出す」(箴言20・5、口語訳)。