「ミナリ」 2020年 アメリカ
世界の映画 映画の世界
第78回
「ミナリ」
2020年 アメリカ 115分
〈監督〉監督 リー・アイザック・チョン
〈原題〉Minari
韓国から米国へ移住した家族の物語。夫のジェイコブはカリフォルニアで働いてためたお金で、勝手にアーカンソー州の田舎に土地を買って移住を決めてしまった。韓国野菜の農園を成功させて貧しさから脱却し、尊敬される父親になりたいと夢を見る。
一方、妻のモニカは家族を守ることを第一とする現実主義者。幼い息子のデイビッドは心臓病を抱えている。けんかを重ね破綻寸前の夫婦であったが、モニカの母スンジャを韓国から呼び寄せることで何とか納まることになる。
スンジャは川のほとりに韓国の香味野菜ミナリ(セリの一種)を植える。ミナリは、年に二度旬を迎え、二度目の旬のほうがおいしいと言われ、それが子ども世代の幸せのために懸命に働く親の姿と重ね合わせられる。
私には、さまざまな信仰の姿が描かれていることが興味深かった。モニカは熱心なクリスチャンであり、カリフォルニア時代には韓国人教会へ行っていたのであろう。在米韓国人にとっては、韓国人教会こそが自分のアイデンティティー確認の場であり、子どもたちに祖国の言葉と文化を伝える教育の場でもある。
しかし引っ越し先に韓国人教会がないために近くの教会を訪ねる。それは、田舎の典型的な白人中心のプロテスタント教会である。
ポールという変わった人物は、日曜日に十字架を背負って歩き、それが自分の教会であると言う。そしてモニカの依頼で、デイビッドの心臓病のために悪魔祓いをしにやってくる。
ある日、スンジャは脳卒中のために体が自由に動かなくなり、そこから大問題を引き起こすことになる。これは移住者に限らず、多くの人が共感する、家族の苦労と危機と再生の物語と言えよう。