「マイスモールランド」 2022年 日本・フランス
世界の映画 映画の世界
第83回
「マイスモールランド」
2022年 日本・フランス
114分
〈監督〉川和田恵真
埼玉に住むクルド人高校生サーリャとその家族の物語である。サーリャの父親は祖国でクルド人の自由を求めるデモに参加して拷問を受けたが、その後、子どもたちと共に日本にやってきた。何度も難民申請をしているが、認定はおりない。
サーリャは、アルバイト先で知り合った聡太と親しくなり、友だちにも言っていない秘密、自分がクルド人であることを告げる。
「クルドってどこにあるんですか」と尋ねる聡太に対して、サーリャの父はこう答えた。「トルコ、シリア、イラン、イラクができる前から、その場所にクルド人はいました。でも戦争の後、国境ができてクルド人は別々の国に分かれました。だから国はない。」
ある日、サーリャの家族は入国管理局へ呼び出され、難民申請が不認定になったこと、今後は「仮放免」となることが告げられる。仮放免とは、本来は入管に収容されるべき人に条件付きで外での生活が認められるものであり、勝手に県外に出ることや就労は認められない。その日から、家族の生活は一層厳しいものとなっていく。
難民支援協会のHPによれば、2021年の日本の難民認定率は0.7%と、他の先進諸国に比べて極端に少ない(英国は63%、カナダは62%、米国は32%、ドイツは26%、フランスは17%)。
今まさに出入国管理法の「改正」(?)案が国会で審議されているが、法案が成立すると、難民申請3回目以降はたとえ母国で危険が待っていようとも、強制送還が可能となってしまう。
この映画は、私たちのすぐそばで悲痛な叫びをあげている「隣人」の声を届けてくれる。私たちはその声に耳を傾けなくてはならないであろう。