「バジュランギおじさんと、小さな迷子」 2015年 インド
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第60回
「バジュランギおじさんと、小さな迷子」
2015年 インド 159分
〈監督〉カビール・カーン
原題:Bajrangi Bhaijaan
心がまっすぐで情も篤いパワンは、ラーマ神を崇め、その忠実なる部下である神猿ハヌマーンをも信奉する熱烈なヒンドゥー教徒である。
パワンは、デリーの町で口のきけない迷子の女の子に出くわした。彼女もパワンを信頼できる人と直感し、慕ってついてくる。まだ字も書けないので、名前もわからない。パワンは「ムンニー」(お嬢ちゃん)と呼ぶ。どこから来たのかもわからない。パワンは思いつく限りの町の名を言ってみるが、あたらない。
それもそのはずムンニーは、たまたま国境を越えてパキスタンから母親と来ていた時に迷子になったのだ。
パワンは何とかムンニーをパキスタンに送り帰そうとするが、暴動によりパキスタン大使館も封鎖されてしまい、ビザも旅券も入手できない。送り届けてくれるという業者に出会い、手はずを整えるが、その相手はなんと人身売買業者であった。
パワンは、自分の手でムンニーをパキスタンの親元に届ける決心をする。正直な彼は、密入国はしないと決めている。果たして道は開けるのか。
彼は言う。「ハヌマーンのご加護の下、何も恐れない。ハヌマーンを念想すれば、すべての困難は除かれる。」
イスラム教を毛嫌いしていたパワンであったが、生きたイスラム教徒や導師たちに助けられながら、彼も変わっていく。国境警備隊員が「この子の親が見つかるように、アッラーに頼もう」と言った時には、彼も思わず、「アッラーのご加護を」と手を合わせるのである。
宗教と文化と政治の違いを超えるもの、それは「愛」であるということを告げる。歌も踊りもあるユーモアたっぷりの極上の「ボリウッド映画」である。