「スモーク」 1995年 アメリカ、日本、ドイツ
世界の映画 映画の世界
第43回
「スモーク」1995年
アメリカ、日本、ドイツ、113分
<監督>ウェイン・ワン
映画は、英国にタバコを紹介したローリー卿の機知に富んだエピソードから始まる。それは「タバコの煙の重さを量れる。まず吸う前のタバコの重さを量り、そこから吸い殻と灰の重さを引く」というもの。単なる前振りのようであるが、そうでもない。映画全体が、この話のように、本当か嘘かわからない話や秘密を織り混ぜながら、人間の真実な姿を描き出していく。
1990年、オーギーはニューヨーク、マンハッタンのある街角でタバコと雑誌の店を営んでいるが、そこにさまざまな人が訪れる。彼はこれまで14年間、毎朝8時に店先の同じ場所で、同じ角度で写真を撮り続けている。その数はなんと4千枚。
作家のポールは、店の常連客。妻が銀行強盗の犠牲となって亡くなり、作家としてスランプに陥っている。そのポールがぼーっとして車にひかれそうにそうになったとき、黒人の若者ラシードが飛び出して彼を助けた。それをきっかけに、ラシードはポールの家に寝泊まりするようになる。ラシードは、自分が幼い頃に失踪した父親の情報を得て、こっそり父に近づいてゆく。
オーギーの元恋人で、18年前に別の男を選んでいなくなったルビーが突然オーギーの店に現れた。「私たちの娘」に会って欲しいと言う。
ポールに仕事が舞い込んできた。ニューヨークタイムズに、クリスマスの物語を書くというのである。ポールがオーギーに何かよいクリスマスの物語はないかと尋ねると、ポールは「あるよ」と言って、自分が写真を撮り始めたきっかけの話を始めた。
最後にトム・ウェイツのすてきな音楽(Innocent when you dream)と共に、その話がモノクロ画面で流れる。何度も見たくなる、珠玉のクリスマス映画である。
(「からしだね」2018年12月号掲載)