「ひつじ村の兄弟」　2015年　アイスランド

世界の映画 映画の世界
第33回
「ひつじ村の兄弟」
2015年アイスランド他93分
＜監督＞グリームル・ハゥコーナルソン

「見よ、兄弟が共に座っている。なんという恵み、なんという喜び」（詩編133・11）
兄弟姉妹は、親や祖父母を別として、神が与えられた最初の隣人と言えよう。最も身近な存在として、ぶつかりあいながら、愛情も育まれていく。ただおとなになってからの兄弟姉妹の対立は、他人同士以上に深刻なケースもある。

アイスランドのある村で、キディーとグミーの兄弟は隣り合わせに住み、牧羊業を営んでいる。しかし40年来の不仲で、口も利いていない。そもそもの原因は父親が兄キディーの相続を認めなかったことらしいが、気の荒いキディーを見ていると、父の判断もうなずける気がする。
さて毎年行われる羊の品評会、今年は兄キディーの羊が僅差で弟グミーの羊を抑えて金賞を受賞した。しかしグミーはその夜、キディーの羊が恐ろしい伝染病スクレイピーにかかっているのでは？と疑い、こっそり検査を依頼する。事実、その通りであったのだが、それは村全体の羊を殺処分する大問題に発展する。村人たちは羊のいなくなった村を離れていき、村は二人の兄弟だけになってしまった。二人には牧羊以外にできることもなく、行くところもない。キディーはグミーを恨み毎日酔いつぶれているが、グミーは将来に向けて秘密裏に周到な計画を進めていた。
ある日、その計画がキディーにばれてしまう。しかし意外にも二人はそこから再び会話を始めるようになる。心から憎みあっていたわけではなかったのだ。大きなものを失いつつ、二人はかけがえのない宝物を取り戻すことになる。
一面雪景色の、壮大なそして厳しいアイスランドの大自然に圧倒される。屋内の装飾品や服装なども魅力的である。