「はじめてのおもてなし」 2016年 ドイツ
世界の映画 映画の世界
第49回
「はじめてのおもてなし」
2016年
ドイツ 116分
原題:Willkommen bei den Hartmanns
<監督>サイモン・バーホーベン
ミュンヘンに暮らす初老のハートマン夫妻。夫婦ともにいらいらし、離婚寸前である。長男のフィリップとその子どもバスティ、長女のゾフィが家に集ってくる。それぞれが自分勝手で他の人を非難し合い、家族も崩壊寸前である。
そんな中、母親のアンゲリカが突然、「難民をひとり受け入れる」と宣言し、ナイジェリアの青年ディアロがやって来ることになった。家族は大きく揺さぶられ、近所にも波紋を広げるが、彼の不思議なスタンスにより、家族は絆を取り戻していくのである。
ディアロはいつも明るくふるまっているが、実は大変な過去を背負っていた。ナイジェリアでは、テロ集団ボコ・ハラムが子どもを兵士にするために誘拐する。逆らえば容赦なく殺される。彼の家族も殺された。彼は必死で逃げてきたのだという。
ゾフィの恋人となるタレクは、こう語る。
「ドイツ人は自分たちがどうあるべきか、今も悩む。ドイツは自由で寛容だ。これを否定する奴らから守る必要がある。ドイツ人でも外国人でも、右でも左でも、ナチでもISでも」
いわゆる先進国のうち、日本ほど難民に対して門戸を閉ざしている国はない。ヨーロッパでもアメリカでも右傾化が進み、難民移民を排除しようとする声が大きくなっているが、日本はそのレベルにすら達していない。受け入れることで文化も豊かになっていくのにと、残念に思う。
「旅人をもてなすことを忘れてはいけません。そうすることで、ある人たちは、気づかずに天使たちをもてなしました」(ヘブライ13・2)。