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大地のリズムと歌-ブラジル通信7 「聖戦とエキュメニカル運動

1995年10月12日、ブラジルの宗教界を揺るがす事件が起きた。事件の背景は以下の通りである。

10月12日は、本来カトリックのノッサ・セニョーラ・アパレシーダ(顕現の聖母)の祝日であり、現在ではブラジルの子どもの日にもなっている。1717年のこの日、3人の漁師が、サンパウロ州北東部のある川で、高さ40センチメートルの黒い聖母像を発見した。持ち帰って祭ったところ、以後大漁が続いたという。その後この町にも奇跡が次々と起こり、これを伝え聞いた人々がここ(現在のアパレシーダ)へ全国から巡礼するようになった。1822年、最初の皇帝ドン・ペドロ一世は顕現の聖母を「ブラジルの守護聖者」と呼び、1930年には教皇ピオ11世により、それが承認される。以来、巡礼者は増え続け、現在では毎年10月12日に、約十万人の人がアパレシーダに巡礼に来る。プロテスタント教会では、こうしたカトリック教会の習慣に対して、多かれ少なかれ批判的である。特にペンテコステ系の教会ではその攻撃度が強い。

事件は、ペンテコステ系教団、神の国ユニヴァーサル教会が運営する全国ネットのテレビ局ヘコルデの宗教番組の中で起きた。セルジオ・フォン・エルデルというビショップが、この日黒い聖母像をもって画面に現れ、マイクを片手に「こんな石膏の塊には何の力もない。こんなものを信じてはいけない」と言い、馬鹿にしながら、その像を12回殴り、10回蹴り飛ばしたのである。侮辱され、怒ったカトリックの信者たちは、各地の神の国ユニヴァーサル教会に詰めかけ、抗議をしたり、脅したり、実際に教会内部を叩き壊したりした。

この事件には、もう一つの伏線があった。神の国ユニヴァーサル教会は、1978年エジール・マセード師他、数名によってリオデジャネイロで始められた教会であるが、急成長し続け、20年足らずの間に信徒数350万人の大教団に成長した。また企業的な戦略で知られ、銀行をはじめ、幾つかの大会社も経営する。1993年に前記のテレビ局ヘコルジを買収した時には、世間を驚かせ、「貧しい信徒を脅し、献金をだまし取っている」という批判がわき起こった。

事件に先立つ9月、カトリックよりのテレビ局グローボは、誰が見ても明らかにエジール・マセード師をモデルにしているとわかる「デカデンシア(退廃)」という批判的なテレビドラマを一月にわたり、連日放映した。このドラマに対して肖像権の侵害でグローボ局を相手取り、訴訟中であった神の国ユニヴァーサル教会が、自分たちのテレビ局で、間接的な反撃に出たという見方もできる。

しかしこの事件の後、ニューヨーク在住のマセード師は、事態を収拾するため、国際電話で緊急の謝罪表明をした。エルデル師はビショップを解任され、番組のキャスターも交代させられて、形式的な解決はしたものの、マスコミは「聖戦」とあおりたて、他のプロテスタント教団も巻き込んで、事件は長らく尾を引いた。

この事件は偶然に起きたのではなく、起こるべくして起こった。いわばブラジルの宗教事情を象徴するような事件であったと言えよう。私は改めて、この国においてエキュメニカル運動がいかに難しいか、しかしそれだけに一層、いかに大切であるかを思い知らされた。

こうした中で幾つかの団体が地道にエキュメニカルな活動を続けている。エキュメニカルな雑誌、新聞、書籍の発行で貢献するコイノーニア、民衆レベルのエキュメニカルな聖書研究や神学セミナーを中心に活動するCEBI(聖書研究センター、Centro Estudo Biblico)、インディオ、黒人、民衆の支援など、主に社会的な活動をするCESE(奉仕のエキュメニカル連絡会、Coordenadoria Ecumenica de Servico)、そして最も包括的な活動をするCONIC(ブラジル・キリスト教協議会、Conselho Nacional das Igrejas Cristaos)などは、注目に値する。

Reihai
(キリスト者一致のための祈祷週の礼拝。詳しくは後述。左が筆者。)
今年の主題聖句「キリストに代わってお願いします。神と和解させていただきなさい。」(第2コリント5:20)が掲げられている。

今回はその中のCONICについて簡単に紹介したい。CONICは、ローマ・カトリック教会、シリア・オーソドックス教会、聖公会、メソジスト教会、ルーテル告白教会、改革派キリスト教会、合同長老教会(少数派)の7教会により、1982年に生まれた。ローマ・カトリック教会がこれに正式に加盟していることは、ブラジルでは大きな意味を持っている。CONICは、成立以来さまざまなエキュメニカルな行事を主導し、民衆を苦悩させているさまざまな社会問題に関わり、連帯を表明してきた。

最も重要な定期的活動は、キリスト者一致のための祈祷週である。ブラジルではペンテコステに先立つ1週間がこれにあてられているが、この週のためCONICは1992年以来、世界共通のテキストを基に、ブラジル独自の課題を加え、さらにブラジルの新しい賛美歌を盛り込んで、入念なテキストを作成してきた。毎年共感者、参加者が増え続け、今年は3万部以上テキストを発行したという。また今年は、この週のために『一致の歌』という題のブラジルの新しいエキュメニカルな賛美歌を集めたCDも発売された(Cancoes da Unidade,Paulinas, CD12099-5)。

「対立と不寛容の諸世紀は、同じキリスト者の家族である兄弟を、他者の中に発見する喜びによって越えられようとしている。その意味で一致のための祈祷週は小さな奇跡である」。祈祷週に向けて、ある雑誌に寄せられた呼びかけの言葉である。

Ongakukai
(一致のための祈祷週、1997年5月14日の音楽会で。)

私の住むレシフェ/オリンダでは、救世軍も加わって、5月14日に加盟教会の聖歌隊を中心にした音楽祭、15日にエキュメニズムについての講演会、16日に合同礼拝が行われた。私もささやかながらこれに携わり、共に一致の喜びを分かち合った。

(『福音と世界』8月号、1997年7月)

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