1. HOME
  2. ブログ
  3. 大地のリズムと歌-ブラジル通信6 「賛美歌『新しい時をめざし』

大地のリズムと歌-ブラジル通信6 「賛美歌『新しい時をめざし』

ニュースタイトル
(”Expositor Cristao”97年1月号記事見出し「日本の教会、ブラジルの讃美歌を歌う」)

新しく出版された『讃美歌21』には、ブラジルの新しい賛美歌も1曲入れられた。今回は、その480番「新しい時をめざし」と、その作者の一人であるエルネスト・カルドーゾの紹介をしたい。

この曲はすでに英語、スペイン語、ドイツ語に訳され、1996年8月リオデジャネイロで開かれた「世界メソジスト大会」においても、同年11月サルバドールで開かれたWCCの「世界宣教・伝道会議」においても愛され、一番多く歌われた。今やブラジルを代表する賛美歌になったと言えよう。次々と新しい人を巻き込みながら、手をつないで歌っているうちに、心まで躍り出す。まさに世界大会にふさわしい曲である。

作者は『讃美歌21』ではエルネスト・カルドーゾとなっているが、実際にはこの曲は1970~80年代の「スポルテアルテ」と言う音楽工房の活動の中で、上記のエルネスト・カルドーゾを初め、パウロ・ロベルト、デア・アフィーニ、エデル・ソアレス、テルシオ・ジュンケルらによって生み出された共同作品である。

原曲の歌詞は、おおむね次のような意味である。

(1)
神はその民と共に歩む新しい時に向かって、私たちを召される。
行き詰まった状況からの変革の時が来た。
しかし一人で孤立していては何もできない。
(くりかえし)
だから、さあ来て!
私たちの輪に入ってください。
あなたがとても大事なのです。

(2)
簡単にできることとは思えない。
死を作り出し、痛みや悲しみを引き起こす、非常に大きな力が存在している。
絆を強めなければならない。

(3)
命を産み出す力が、今日神の恵みを通して、私たちのうちに働いている。
愛を分かち合い、力をあわせて働くように
と、神は私たちを招いておられる。

カルドーゾ
(E.カルドーゾ、”Contexto Pastoral”紙 1996年3/4月より)

エルネスト・カルドーゾは、リタージーの国際的なリーダーであったが、1995年12月20日に38歳で病死している。
彼は小さい頃からメソジスト教会の活動に親しみ、全国青少年連盟の会長も務めた。メソジストの神学校を卒業したが、結局その多彩な才能はリタージーのリーダーとして発揮されることになる。

彼はあるエキュメニカルなプロテスタント月刊誌のインタビューで、「(ブラジルの)伝統的なプロテスタント教会の礼拝が、ほとんど牧師によってコントロールされ、非常に形式的である」と指摘する一方、逆に音楽のリーダーに賛美を任せている教会では、賛美とそれ以外の時間が「分裂症」を起こしていると分析している。

「リーダーたちは音楽の準備はするが、礼拝がどういう場であるか理解していない。……礼拝は観客席であってはならないし、市民社会活動の行進への召集の場であってもならない。そこで人々が神学をし、神について学び、聞き、語り、聖なる方と交わり、普段の生活が刷新されるきわめて特別な場である」。
(『コンテスト・パストラル』95年5月号)

ラテンアメリカ教会協議会(CLAI)では、1988年にブラジルのインダイアツーバで開かれた第二回総会以降、ラテンアメリカ各国の教会が、礼拝を真に豊かなものにしていくために協力していく必要性が確認され、1992年にラテンアメリカ・リタージー・ネットワークが生まれた。中心になってその構想を練ってきたカルドーゾは、そのコーディネーターに就任している。

前述のインタビューによると、このネットワークでは、「経験の交流」を合い言葉に、神学校や教会の施設で出会う場を作ったり、資料としてカセットテープや楽譜などを発行したりしている。地域の指導者を育成することも大事な課題である。また「ラテンアメリカ教会協議会が取り組んでいるさまざまな課題、例えば黒人牧会、先住民牧会などのテーマを理解するために、いや生き生きと経験するためには、それがリタージーの次元で豊かにあらわされていかなければならない」という。

カルドーゾは、短かすぎた活動生命の中で、エキュメニカルなリタージーの「宣教」のために、キト、サン・ホセ、ニューヨーク、ボンベイ、アムステルダムと世界中を飛び回った。

彼はただ単にリタージーのみを刷新しようとしたのではない。この世界のさまざまな抑圧状況を認識し、「神がその世界を変革してくださる」という信仰と希望に立ちながら、その最も大切な器であるリタージーの刷新に情熱を注いでいったのである。そうしたことを心に留めるときに、「新しい時をめざし」の言葉ひとつひとつが命をもって語りかけ、この歌がさらに豊かな広がりをもって響いてくるのではな いだろうか。

版権の交渉により『讃美歌21』の発行を知ったブラジル・メソジスト教団出版局は、月刊新聞『エスポジトール・クリスタン』の97年1月号で、いち早く「日本の教会、ブラジルの讃美歌を歌う」と報じた。この曲の背景とカルドーゾのキリスト教界への貢献について簡単に述べた後、次のように結んでいる。「願わくは、日本の教会が『神は新しい時に向かって、私たちを召される……』と歌う熱情と喜びの活力を受け取られるように。」

新聞記事
(”Expositor Cristao”紙、1997年1月号1面のヘッドラインから)

(『福音と世界』7月号、1997年6月)

関連記事